【小説】SFマガジン2020/2のススメ
年末に出ましたSFマガジンの2月号がめちゃくちゃ良かった。
やはり新連載の『廃園の天使Ⅲ 空の園丁』『戦闘妖精・雪風 哲学的な死』が目玉だろう。
更に『三体Ⅱ 黒暗森林』のプロローグまで載っているとあればもう読まざるを得ない。
『廃園の天使Ⅲ 空の園丁』/ 飛浩隆
グラン・ヴァカンスから始まる本シリーズの第3作目がついに連載される。
飛浩隆氏は『象られた力』『自生の夢』という2作で日本SF大賞を受賞している、日本屈指のSF作家だ。
3作目が連載開始した廃園の天使シリーズでは、AIの息づく電脳世界と人間世界の関わりが描写される。
本作の特徴的なところはAIの存在の生々しさにある。
これぞ日本のSFという端正な文章力にやられてしまう。
設定自体は今となってはそう珍しくはないものの何年もかけて書いているだけあり、美しい筆致が新鮮味を醸し出す。
今回連載開始した『廃園の天使Ⅲ 空の園丁』でも、日本の田園風景を背景としたAI世界が、淡々とした筆致の中にありありと浮かんでくる。
AIの人間臭さが本作の美しさを際立たせる。
早く続きが読みたい。
アニメ化したこともある戦闘妖精・雪風の第四作目がついに連載開始。
2作目、3作目は最近読んだのだが。。
戦闘妖精・雪風は各作ごとにテーマががっつりと存在していて、分かりやすく面白い。
主人公の深井零と乗機である雪風との関係性がキモである。
また、2作目3作目と徐々に敵の宇宙人?であるジャムの存在に切り込んでいく。
ジャムという人間と大きく異なる知性体を通じて人間とはなにか?という疑問に対しても切り込んでいく話の大きさ、そして純粋にバトルものとしての面白さが本シリーズにはある。
4作目冒頭は3作目で描かれた機械知性AIの世界により踏み込むというthe続編という感じで、大きなテーマはまだ見えてこないが、今後が非常に楽しみである。
『三体Ⅱ 黒暗森林』/ 劉慈欣
三体はハヤシライス、と友達が言った。
三体冒頭は文化大革命から始まる、ガチガチの中国文化圏SFだ。
僕みたいに文革に馴染みのない日本人にはとっつきにくさを感じるだろう。
インドのカレーみたいなコアさを想像しているところにがっつり超展開がぶち込まれる。
こんなん誰でも面白いじゃん!ハヤシライスじゃん!!
大味でありながら、精緻なこの展開にきっと全人類やられてしまう。
2作目の冒頭シーンでは、ファーストコンタクト以降より異星人とのやり取り、人間のコミュニケーションの特異性が表現されている。
続編も必ず面白くなると予感させる。
この2020/2のSFマガジンは超名作の新連載が多く、是非ここから読みだす人が増えてほしい。
まぁ僕もこれまでほぼ読んでないのだけど、きっと読み始めるには丁度いいタイミングだと思う。
イーガンの短編も中々良かったしね。